(2014/5/11)広がる「ジビエ」 探る販路 行政も後押し

 シカやイノシシなど野生動物の肉を使った「ジビエ料理」が中部各地で広がっている。処分した害獣の有効活用や山間部の経済振興につながるとして、行政の後押しも進む。一方で今後は地域間の競争も活発になると考えられ、全体の販路を広げる方策が必要となりそうだ。

 日本の秘境百選に選ばれている長野県南部の遠山郷(飯田市)の食肉販売会社「肉の鈴木屋」はシカやクマ、イノシシにウサギ、ヤギなどを含めた12種類の肉を「遠山郷の十二支」と名付けて販売。1セット1万2千円と高価だが、バーベキュー用などで愛知県や静岡県から注文が相次ぐ。

 1957年の創業以来、地元の猟友会員から仕入れてきた。臭みが強いイメージがあるが、「捕獲後に迅速に血抜きなどの処理をすれば抑えられる」と社長の鈴木理さん(53)。2011年にシカ、イノシシ、ウズラなどを「猪鹿鳥(いのしかちょう)セット」と名付けて販売したのが贈答用に人気となり、翌年に十二支セットを発案。「ジビエはなじみがないだけで、親しまれるよう紹介すれば需要はある」と話す。

 農林水産省によると、シカやイノシシなどの野生鳥獣による農作物被害は09年度以降、全国で200億円を超える。里山の荒廃や猟友会員の減少により野生鳥獣が増加。殺処分しても地中に埋めるなどの費用がかかる。そこで、山間部の多い中部各地で注目されているのがジビエ料理。メニューを考案するまちづくり団体やレストランが増え、県が肉処理のガイドラインを策定したり、民間会社と商品を共同開発する動きが活発になっている=表参照。

 一方、鳥獣被害やジビエ活用に詳しい信州大農学部の竹田謙一准教授(42)は「今は表面化していないが、将来的に確実に地域間競争が出てくる」と指摘する。既に大都市の飲食店は、本州のシカより大きなブロック肉を確保でき、衛生管理の仕組みが整った北海道のエゾジカを求めているという。「地域の文化や歴史に根差した商品、料理を開発する必要がある」と独自性を求める。

 日本ジビエ振興協議会によると、全国で捕獲された野生鳥獣のうち、ジビエに利用された割合は3~4%にとどまる。小谷浩治事務局長は「利用率が上がれば猟友会員の収入増や狩猟人口の増加につながり、野生鳥獣の被害減にもつながる」と期待する。

 ジビエが浸透しない大きな要因は、統一した衛生管理や処理方法がないこと。現在は各県が独自にガイドラインを設けるが、厳しい細菌検査を求める内容から、必要最低限のものまで幅がある。竹田准教授は「大手流通会社がジビエを扱おうとしても、安全性の担保がハードルになっている。統一基準を作ることが一番のPR」と呼びかける。

 <ジビエ> フランス語で「狩猟で得た鳥獣肉」の意味。欧州では貴族の伝統料理として発展し、特にフランスで高級食材として珍重されている。肉に脂肪が少なく、栄養価も高いとされる。日本各地ではシカやイノシシの肉料理だけでなく、肉を使ったまんじゅうやよもぎ餅など多くの商品が考案されている。カラスのもも肉や脳みそを使ったメニューもある。

 (中日新聞)

引用元:http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014051190145629.html?ref=rank

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