笠松式くくりなわを山中に仕掛ける狩猟の魅力実感(長野県)

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長野県が、鹿やイノシシなどの野生鳥獣による農林業への被害を食い止めようと開設した「ハンター(狩猟者)養成学校」の狩猟セミナー「わな講習」が、長野市内で開かれた。生徒として参加した記者は、「わな」の取り扱い方から実際に山中で仕掛けるまでの手順を学んだ。猟師の間で「人と獣のだまし合い」と称される神経戦を制するのに不可欠なのは、「見えない獲物」を想像する推理力と、丁寧かつ的確にわなにはめる知恵だった…。

講習の教材となったのは、県内でも多くの猟師たちが愛用している「笠松式くくりわな」。直径4ミリの鉄製ワイヤで囲った20センチ四方の踏み板を動物が踏むと、ワイヤが跳ね上がり、同時にバネの力で動物の足にワイヤが締まる仕組み。

「わな猟は目の前に獲物がいない猟だ。鹿やイノシシが歩いている姿を想像して仕掛けるんだぞ」

そう言ってくくりわなを手にしたのは、わな講習で講師を務めた長野地方猟友会の小山英雄さん(77)だ。40年以上も狩猟に携わる小山さんは「あそこが獣道だ」とささやき、記者の目には雑木林としか映らない里山の斜面を足早に上って行く

試される推理力

まずは、推理力が試される。わな猟は、獲物の「足跡」や「糞(ふん)」、獣が土中の虫を食べた痕跡たる「食痕」を見つけ、わなを仕掛ける獣道を特定するという「鑑識」や「探偵」のような作業に取りかかった。

獣道に「当たり」をつけるといよいよ、くくりわなの設置に入る。ここからは、人間の知恵が最強の“武器”になる。

さっそく、ゴム手袋と軍手を身に付けた。人間の臭いがわなに移ると、嗅覚が鋭い獣たちに察知されてしまうためだ。

ワイヤの片方を近くの木にくくりつけた後、地面を5~10センチ掘り、わなを埋める。掘り返した土は、別の場所に運んで捨てる。獣道に不自然な盛り土があれば、動物が警戒して寄りつかないからである。

最後に、わなの上にカムフラージュのための土や葉をかぶせて完成だ。太い木の根や石が埋まった地面を掘るのは容易ではなく、一連の作業に約10分要した。

ちなみに、県内の狩猟期間(11月15日~翌年2月15日)前だったため、安全ピンは装着したままにした。

わなには、このほか、餌を仕掛けた檻(おり)の中に獲物をおびき寄せる「箱わな」もある。1人のハンターが同時に設置できるわなは、最大30個までと鳥獣保護管理法で定められ、原則として自ら見回りができる数しか仕掛けてはならない。

凶暴化するクマや大量捕獲可能な鳥類をわなで捕らえるのも、法で規制されている。事故や乱獲を防ぐための措置だ。

くくりわなを丸太で押すと、「バンッ」という大きな音とともにワイヤが締まり、木に巻き付いた。ワイヤをどれだけ引っ張っても、びくともしない。

銃などで止刺し

通常ならハンターは、なわにかかった獣を見つけ次第、銃などで息の根をとめる「止刺(とめさ)し」を行う。捕らわれの身となって荒れ狂う鹿やイノシシに突進され、大けがをする事故も起きており、獣に無用な苦痛を与えないために迅速、的確な止刺しが求められる。ここでも“締め”が肝心だ。

銃などの武器を使わず、人類が古来続けてきた狩猟の原点たる「わな猟」の魅力を肌で感じ取った。信州の豊かな農産物に安寧をもたらす担い手が、増えていくことに期待したい。

産経新聞

http://www.sankei.com/premium/news/161010/prm1610100004-n1.html

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