鹿たちの不思議な行動「鹿だまり」…奈良公園(奈良県)

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奈良公園で今夏、鹿たちの不思議な行動が見られた。

 奈良国立博物館の新館前に、夕方になると多数が集まり、じっと座り込む現象だ。謎の行動は「鹿だまり」と呼ばれ、ネット上でも話題となった。古都で人間と共生し続けてきた野生動物が、例年と異なる行動パターンを見せたのは、なぜだろうか。

 8月上旬、午後5時。まだ厳しく照りつける日差しの中、博物館前の芝生に30頭ほどが集まっていた。時折、草を食べる鹿もいるが、多くは静かに体を休め、目を閉じているものもいる。鹿は時を追うごとに増え、同6時半には100頭近くに。辺りが暗くなるにつれ立ち上がる姿が目立ちはじめ、同8時には「鹿だまり」は跡形もなく消えた。

 博物館の内藤栄学芸部長(55)は「今年ほど、群れをなして一か所に集まる年はなかった」と驚く。6月以降、博物館のツイッターで発信され、鹿だまりとともに観光客らが記念撮影するなど、隠れた人気スポットになった。

 ■観光客追って

 多くの鹿が夜を過ごす春日大社境内は、鹿せんべいを扱う売店が集まる東大寺南大門から南へ一直線。鹿だまりはこのルートからやや西に外れており、本来は無駄な動きだ。

 「観光帰りの人の動きについていっているのでは」と奈良の鹿愛護会の吉岡豊事務局長(68)は推測する。確かに、夕方の鹿の足取りは、観光客が近鉄奈良駅へと向かうルートを追った結果のようにもみえる。鹿せんべいを余らせた観光客に先頭の鹿がつき、他の鹿も従ったのか。今夏の鹿せんべいの売り上げは近年で一番だったといい、西への動きを促した可能性もある。

 ■歩道整備一因か

 だがそれでも、鹿がその後、博物館の敷地でとどまる理由には直結しない。鹿だまりは博物館の地下回廊の上にできるため、「通気口から吹き出す風を求めているのでは」とする見方もあるが、もちろん、それも今年始まったことではない。

 鹿だまりの周辺を探ると、昨年と今年で、決定的に変わったところがあった。

 県奈良公園室によると、鹿が横断する大仏殿交差点付近の道路では、北側の歩道工事が5月に完成。さらに南側には、人間の無理な横断を防止するために花壇が設置された。この結果、従来は南側歩道に集中していた観光客の流れが、北側歩道へと移行したという。

 鹿だまりの芝生はなだらかな斜面だ。博物館前の池からの風も相まって、夏場の鹿にとっては本来、涼を取れる魅力的な場所なのだろう。ただ、これまでは、芝生手前の南側歩道に立ちはだかる<人の壁>が妨げとなっていた。歩道整備による観光客の動線の変化を経て、今年、鹿だまりが出現した――と考えられるかもしれない。

 ■野生の一面

 8月後半、徐々に規模を縮小した鹿だまりは、9月に入ってうそのように見られなくなった。夏場の鹿は群れで動く習性を持つが、秋の繁殖期を迎えると、雄1頭を中心とした小グループに分かれるのだ。

 わずかな環境の変化、人間との適切な距離感……。毎年同じように過ごしているような鹿にも、人間と共生するからこその気苦労もあるのだろう。来年も、この光景に巡り合えるかどうかはわからないが、街中で暮らす「奈良の鹿」が秘める、野生動物としての一面が垣間見えてきそうだ。

読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/national/20160929-OYT1T50050.html

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